2016年12月29日木曜日

「カジノ関連株」の上昇が危うい「3つの理由」


 国内でカジノを運営することに道を開くIR推進法(統合型リゾート整備推進法)が12月15日、成立した。カジノ開設に伴う諸問題の議論を置き去りにして、強引に採決した感がぬぐえない。

■カジノができれば既存のギャンブルと競合が起きる

 株式市場ではカジノ関連株を物色する動きが広がっているが、危うい上昇と考えている。それには3つの理由がある。

 ①日本でカジノが始まると、パチンコ・パチスロ・公営ギャンブルと競合する可能性が高い

 日本は、カジノこそ解禁されていないが、すでにギャンブル大国と言える。パチンコ・パチスロ・公営ギャンブル(競馬・競輪・競艇など)・宝くじなどが巨大産業となってひしめいているからだ(これらがすべて広義のギャンブル産業に含まれるという前提で話を進める)。

 日本でカジノが始まり、もし大成功するならば、既存のギャンブル産業の売り上げを奪っていくことになるだろう。なぜなら、ギャンブル産業は、顧客の損失によって胴元(運営者)が利益をあげる仕組みになっているからだ。ギャンブル産業が拡大すればするほど、ギャンブルで損する国民は増えることになる。ギャンブルに対するニーズは決してなくならないが、増え続けることもない。

射幸性を高めると、どうなるのか?
 すでに、パチンコ・パチスロ・公営ギャンブル・宝くじなど、ギャンブル産業は競争激化のあおりを受けて、売り上げが頭打ちになっている。どのギャンブルも、生き残りを賭けて、あの手この手で顧客呼び込みのアイディアを競っている。

 競争激化に苦しむギャンブル産業の売り上げを増やすのに、手っ取り早い方法がある。射幸性(ギャンブル性、射幸とは偶然に得られる利益や成功をあてにすること)を上げることだ。賭け金に対して何倍の賞金が得られか、その倍率を上げる、あるいは、1回の賭けで得られる賞金の上限を引き上げていくことが、射幸性を強めることにつながる。すると、賭けに参加する顧客が増えることがわかっている。

 射幸性を強めると、勝つ人の賞金は大きくなる一方、負ける人の数は増えることになる。それでも、射幸性の高いギャンブルに人は向かうことがわかっている。ギャンブルを楽しむ人よりも、生活を賭けてギャンブルをする人が増えていく。ギャンブル依存症の問題も起こる。

 それでも、売り上げが伸び悩むようになって、ギャンブル業界では射幸性の引き上げ競争が起こっている。たとえば、競馬では、「3連単」(1着・2着・3着となる馬番号を着順通りに的中させる投票法)という射幸性の高い投票方法の人気が急速に高まっている。宝くじでは、売り上げが伸び悩むようになってから、1等・前後賞を合わせた賞金額を、3億円、ついには10億円と引き上げることで、射幸心をあおる戦略をとっている。

■パチンコ・パチスロからカジノへ客が流れる可能性

 パチンコ・パチスロは、依存症対策として射幸性に規制がかかっている。射幸性を高めると需要が増えることがわかっているが、パチンコは新機種の認可を受ける段階で、射幸性の審査を受けるので、単純に射幸性を高める戦略は取れない。最近は、ストーリー性を高めて、集客を高める戦略をとっているものの、射幸性の操作ほどの効果はない。

 パチスロには、高い倍率を設定できるものもあり、射幸性を求める顧客の受け皿となることもあるが、常に規制が後から追いかけてくる可能性がある。

 ここで、カジノがスタートしたら、どうなるか? カジノは、ファミリースペースでは、射幸性が過度に高いゲームは排除されるはずだが、たとえばVIPルームでは、かなり大きな賭けができるようになるだろう。パチンコ・パチスロの射幸性を制限したままで、カジノのVIPルームでそれを上回る射幸性を許容すれば、高い射幸性を望む顧客は、これらから離れ、カジノに向かうと考えられる。

 カジノは、パチンコのように、全国津々浦々に作られるわけではないので、全国にちらばるパチンコとは競合しないとの見方もある。それでも、時間をかけて、より射幸性の高いギャンブルに人が吸い寄せられる流れは出ると考えている。

世界でもカジノが増えている

 カジノ関連株と言われる企業のほとんどが、パチンコ・パチスロ関連株でもある。カジノがスタートすれば単純にカジノで儲かるというイメージで買われているが、実際にカジノがスタートしたら、カジノは栄えても、パチンコ・パチスロ産業がダメージを受けることになりかねない。

 パチンコ・パチスロ産業や公営ギャンブルがカジノによってダメージを受けないようにするには、日本版カジノのVIPルームで、射幸性を厳しく制限する規制を導入する必要がある。そうすると、日本のカジノは魅力ないという評判が、世界に広がってしまうだろう。

■世界中で競争激化、開始も2020年以降

 ②世界でカジノが増え過ぎて競争が激化している

 日本でカジノを作れば、海外から顧客がたくさん押し寄せると期待する向きもある。2007年以降にマカオでカジノ産業が急成長したことを受けて、アジアでカジノの導入ブームが起こった時は、日本でも、カジノ解禁の議論が盛り上がった。その時、すぐにカジノを開始すれば、日本でも成功する可能性は高かったかもしれない。

 ところが、日本では、IR推進法はなかなか成立まで進まなかった。そうしているうちに、シンガポール・韓国・フィリピン・マレーシアなどアジア各国で次々とカジノが建設されていった。

 その結果、あまりにカジノが増え過ぎて過当競争となり、近年、カジノの成長は止まった。マカオなどではカジノ収入が減り始めている。アジアだけでなく、米国でもカジノは競争激化で簡単に利益をあげられなくなってきている。

 「日本でカジノを始めれば海外から顧客が大挙して押し寄せる」というイメージを持ちにくい状況になってきている。

 ③実際に国内でカジノが始まるのは2020年以降

 IR推進法の成立により、カジノを含む統合リゾートを解禁する方針が決まった。ただ、実際にカジノを建設するには、具体的に細かいルールを定める「IR実施法案」を成立させる必要がある。その検討はこれから始まる。

 どこにカジノを建設するか、依存症への対策をどうするかなど、まだ越えなければならないハードルは多数ある。実施法の成立後に建設を始めても、運営開始は2020年の東京オリンピックに間に合わない可能性が高い。

【2016年12月29日6時00分配信 東洋経済オンラインから抜粋】

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